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    かりるに当って女房が挨拶に行ったら、温泉のぬるいことを例外なく念を押して、

    「なに?」

    盛子は、歯切れのいゝピツと語尾の跳ね上るやうな調子で、愛想笑ひをしながら小谷に訊いた。

    と訊くと、遊び友達と河へ行つたといふ返事であつた。

    と、云ひながら徳次の肩をつかんで押しもどした。誰もが疲労のための一種煤すゝけじみた鎮静を現していたにもかゝはらず、練吉だけは明かにまだ興奮していた。と云つて悪ければ、恐しく深い印象を与へられたものの如くであつた。そして、一応の取調べを受けに、二人の責任者が参考人として自動車に乗せられ、本署のある町まで同行を求められたときに、練吉は自分も乗う込まうとして加藤巡査にひきとめられた。

    「はあ、それは――」

    「水神淵を知つとんなさるだらう」

    「あの山に田地を注ぎこんで裸になつたのは三人、わしも知つとる」

    「うん、今帰るところだ」

    「あ、さう云へば」

    「かりに、おれが真正面から反抗的に出て、それがために住みにくくなつたとしても、同じことだ」

    「半之丞の子は?」

    「よく来てくれましたな。けふはゆつくりしてもかまはんのでせう。あんたは碁を打ちますか。――さうですか、御存知ないですか。それはちよつと。まア、しかし、こんなものは覚えん方がいゝかもしれませんなあ」

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