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ごろごろする石の上を下駄ばきでは歩きにくかつた。房一は川から上つたまゝの濡草履をはいているので速い。盛子は空からになつた追鮎箱を手にして後からついて行つた。
「ねえ、御苦労なこつた」
と、房一はぐいと身体を起した。それがあまり突然だつたので、傍にいた徳次は慌てて立ち上つた。
「へえ。ちよつとばかし――」
「いやあ、もう沢山ですなあ。さつきはどうも照れ臭くつて弱つたぢやありませんか。何と云つたつて、皆に顔を見られるんだから、たまつたもんぢやない。あんなに弱つたことは生れてからはじめてですよ」
二人は自転車をひきずつたまゝ近よつた。
と訊いた。
「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。
その時、練吉はぐつと盃をつきつけた。
「誰かと思つたら――」
「なあ、ジョン!」
「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」
二人は今船で流れの上を渡つていた。綱を手繰たぐる徳次のわきには房一が自転車のハンドルをつかまへて立つていた。全体に銀白色の金属でつくられたこの自転車はいかにも新しげだつた。それさへ、徳次の目には医療器具か何かのやうに特別な機械に見えた。